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デスクのつぶやき 東日本大震災編 第1話「地面がトランポリンのように跳ねた」
前の会社の話だし、どうしようか迷ったが、記憶を風化させないためにと思い筆をとった。当時、私は茨城県水戸市在住でラジオ局に勤めていた。
8年前の2011年3月11日、その時。私は茨城県庁4階にある県政記者クラブを出て、通りをはさんで隣接する県開発公社ビルに向かって歩いていた。
県庁の正面右側には県警察本部が、また、左横には県議会棟があり、県政の中枢機関が集まっている。
その中枢機関を横目に見ながら私は、週末の福島温泉旅行を予約するため県開発公社内にある旅行代理店へ歩いていた。福島旅行は前夜に、妻と思いつきで決めていた。いわきか湯本あたりの宿でも取るつもりでいた。
水戸市内では日本三大名園のひとつ、偕楽園で梅まつりがスタートしたばかり。その梅まつりに花を添えるかのような青空。青空を見上げながら、旅行代理店までのおよそ200メートルを歩いていると、急に周囲に音が無くなった。今考えても不思議だが、本当に空気の音や鳥のさえずりがまったく聞こえなくなったのだ。
次の瞬間、地面がトランポリンのように跳ねはじめ、立っていることが出来なくなった。水戸市によると、震度6弱を記録したという。
「その壁にひびが入っているから、離れたほうがいいよ」
後ろを歩いていた作業着姿の男性が促した注意で、我に返った。消えていた音がかえってきた。ゴーという地鳴りのような音と自動車盗難防止用のけたたましい警報音。私から2メートルほどのところにそびえたっていた、県庁の空調施設の高さ8メートルほどのコンクリート壁にひびが入り、それがみるみるうちに長くなり始めていた。その壁から離れつつ、いつも胸ポケットに忍ばせてあるサンヨー製のICレコーダーを手に取り、録音ボタンを震える指先で押した。
「ただいま3時45分すぎです。県庁前にいます。えー、すごく、すごい揺れを感じています。えー、揺れは1分以上続いており、駐車場からは、えー、車の警報音が鳴り響いています。えー、建物からは次々に人が出ています。ただいま、3時47分です。かなり強い揺れがまだまだ続いています。」
※著者注:あまりの衝撃に時間を1時間間違っていた。
おとこわり:個人的な記憶に基づいて書いていますので、事実誤認や現在と違う部分もあるかもしれませんがご容赦ください。
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