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3.11を忘れない⑫ 福島第一原発 廃炉作業現場
東日本大震災から10年。
FNN取材団としてサガテレビも被災地を取材してきました。
記者とカメラマンが目にした被災地の動画をサガテレビのホームページに一挙に掲載します。
未曾有の災害を忘れないために・・・
取材をめぐる当時の状況
福島第一原発の事故から3年半。福島第一原発では高い放射線の中で廃炉作業が続いていました。一方、原子力規制委員会は、鹿児島県の川内原発再稼働に向けた事実上の合格証となる安全審査書を了承し、福島第一原発の事故後、初めての再稼働に向けて大きく動き出していました。
放送:2014年9月30日
(キャスター)
津波の被害を受けて大規模な原子力災害を引き起こした福島第一原発の事故から3年半が経ちました。放射線の高い線量が引き続き出続けている原発周辺ではいまも7000人余りが廃炉作業に取り組んでいます。サガテレビの記者としては初めてこの福島第一原発内に入りました。取材にあたった田村記者の報告です。
(田村記者)
今回、私たちFNNの取材団は約1時間、バス内からの取材を許され、この福島第一の3号機から4号機の近くまでいくことができました。
(キャスター)
福島第一原発の状況はどうなっているのでしょうか?
(田村記者)
地震の後、全電源を喪失した福島第一原発は、コントロールを失い、その後の水素爆発で大きなダメージを受けました。1号機から3号機までは圧力容器内の核燃料が格納容器の底に溶け落ちたままという深刻な状態が今でも続いています。福島第一とその周辺の地域の今を取材しました。
【VTR】
「本店、本店大変です。3号機たぶん水蒸気だと思うけれど、今、爆発が起こりました」
旧ソ連のチェルノブイリ事故に次ぐ規模の事故となった東京電力福島第一原子力発電所の事故。日本人が初めて立ち向かう深刻な原発事故です。
(記者リポート)
「かつてサッカー選手の養成施設だったこの施設。現在廃炉作業の拠点となっています」
福島第一から南に20キロ余りにあるJヴィレッジ。天然芝があったコートは、廃炉作業に向かう作業員たちの車で埋め尽くされていました。取材団もここから、福島第一へ向かいます。
(東電社員)
「0・8マイクロシーベルトです。これから、適宜、線量を皆さんに紹介していきたいと思います」「バスは間もなく、富岡町内、帰還困難区域に入ります」
福島第一原発に隣接する富岡町。町を貫く国道6号線は10日ほど前に一般の車も通行できるようになりましたが人が住むことは許されていません。一般住宅に入れないよう、防犯用のフェンスが張り巡らされています。人気がなく、地震以来、壊れたままの家。手を入れる人がおらず、荒れ果てたかつての水田。この光景が福島第一まで続きます。
(東電社員)
「現在、線量は毎時2・6マイクロシーベルトです」
原発が立地する大熊町に入ると、放射線の量が徐々に増えていきます。
(東電社員)
「前方に大きなクレーンが見えてきたかと思います。間もなく福島第一原子力発電所です」
厳重な警戒の先にあるのが、福島第一原発です。1300人の東電社員と6000人の作業員が交代で、昼夜を分かたず廃炉作業にあたっています。構内で目につくのは汚染水などを入れるタンクです。1日400トンずつ増える汚染水を貯蔵するため、約1000個設置され、いまも増え続けています。そして、事故を起こした原発が見えてきたその時…
【東電社員】
「あーだめ。ストップ」
事故後も、テロ対策などの理由で撮影は厳しく制限され、今回も代表のカメラを除き、携帯電話すら持ち込むことは許されませんでした。そして、見えてきたのは、1号機と2号機。1号機は水素爆発で屋根が吹き飛んだため、白いカバーに覆われています。そして、同じく水素爆発を起こした3号機には大きな傷跡が今も残ります。
3号機建屋近くの放射線量は500マイクロシーベルトを超えています。手元の線量計が示した値は541マイクロシーベルト。約3時間弱で、日本人が自然界から1年間に浴びる放射線量に達します。地震発生時は点検中でいわゆるメルトダウンは起きていない4号機の近くでは汚染水を増やさないよう地下水の流入を防ぐため周囲の土を凍らせる工事が続けられていました。
1号機から3号機の廃炉を進めるには溶けた核燃料を取り出すことが必要ですが、その方法は決まっていません。
(福島第一原発 小野明所長)
「実際にデブリ(溶け落ちた燃料)の状態がどうなっているのかわからない。今後は、非常に放射線量が高いということもあるので、ロボット技術を駆使し、調査を行いながら、実際にどうやるかという作戦を立てていくことになる。そういう意味では30年40年と非常に長期の作業になる」
(原子力規制委員会 田中俊一委員長)
「これで了承するということでよろしいでしょうか?ありがとうございました」
今月10日、原子力規制委員会は鹿児島の川内原発再稼働に向けた事実上の合格証となる安全審査書を了承し、福島第一の事故後、初めての再稼働に向け大きく前進しました。この動きを福島の人はどう見ているのでしょうか?
【福島テレビ報道部大山要デスク】
「福島に限っては福島第一原発の廃炉が最大の焦点。全国的に原発を動かすというところには反発が大きいのが正直なところ。福島にいる者として言えるのは、福島の事故はどうして起きて、事故で学んだ教訓を広く伝えていくかというところに尽きる」
事故から3年半余り、廃炉作業は、まさに始まったばかりです。
(VTR終)
(キャスター)
改めて田村記者に聞きます。実際に福島第一内で取材した感想は…。
(田村記者)
発電所の中は大規模な建設現場といった感じです。全員が防護服とマスクをしていて当然ですが、初めて訪れた私たちからすると異様な感じでした。VTRにもあったように構内では非常に放射線量が高い場所があります。このような場所で暑くてもマスクを着けたまま、場所によっては鉛のスーツで放射線から体を守りながら廃炉に向けた工事を着々と進める作業員には頭が下がる思いでした。作業員の食事は弁当が外から持ち込まれていて、今後、温かい食事がとれるよう休息する施設の建設が急ピッチで進められていました。
(キャスター)
廃炉に向けて今後どのようなことが課題になりますか?
(田村記者)
現在の課題は汚染水対策です。これまで貯蔵された汚染水は40万トンと膨大な量です。いまでも1号機から3号機の原子炉内には、それぞれ100トン近くの地下水が流れ込んでいるということで、原子炉周囲に1500本の管を張り巡らせて周囲の土を凍らせ流入を防ぐ工事が年度内の完成を目標に行われていました。また、溜まった汚染水はアルプスと呼ばれる放射性物質を取り除く装置で処理し海に放出したいとしていますが、こちらはまだ、地元の理解が得られていません。廃炉に向けては膨大な放射性廃棄物が出続けていて処分先は決まっていません。これら負の遺産を少しでも減らすことができるよう国を挙げての対策が求められます。また、福島の被害、そして事故の教訓を無にしないためにも川内原発の再稼働に向けた動きを見ていく中で、電気を作るということ使うということの意味についていま一度考える機会にしなければならないと感じました。
(終)
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