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2021.07.12

じじぃ放談13「錨」なきニュースショー

アンカーマン擁する、見ごたえあるニュースショーの時代は終わったのだろうか。

「アンカー」は、船が流されないよう海に投げ入れる錨(いかり)の英語で、単なるニュースの司会進行役だけではなく、ニュースの背景や視点などを語り掛ける役を担い、その名前がニュース番組の代名詞となることも多い。2008年までほぼ20年間続いたTBSの「筑紫哲也NEWS23」がまさにそうで、朝日新聞記者出身の故筑紫哲也さんは、日本のテレビ界で代表的な「アンカーマン」だった。

ニュースショーの本場・アメリカではかつて、各局の名物アンカーマンたちが競い合う時代が続いた。CBSイブニングニュースを19年間率いた故ウォルター・クロンカイトは、1960年代のケネディー暗殺、ベトナム戦争時代にCBSの顔だった。リベラルにして愛国的な発言から付いたニックネームは「アメリカの良心」。米アンカーマンの先駆けである。

1980年代になると、番組の古い順番で言うと、NBCのトム・ブロコウ、ABCの故ピーター・ジェニングス、CBSのダン・ラザーの3人が、米三大アンカーマンと言われた。いずれも長寿番組で30年近く続き、2005年までにそれぞれ役割を終えた。各局のニュースのオープニングの音楽とアンカーマンの名前を紹介するナレーションを口ずさむと、シニア以上のアメリカ人は間違いなく相好を崩して懐かしむ。

米三大テレビ局の後発だったCNNで「トークショーの帝王」と呼ばれたラリー・キング氏が今年1月、87歳で亡くなった。著名政治家、経済人ら話題の人へのインタビューが得意で、トレードマークのサスペンダー姿で眼鏡越しの視線が鋭かった。1985年から25年間、「ラリー・キング・ショー」を務めた大物だった。

さて、日本。初の本格的キャスターニュースショーとなったTBSの「ニュースコープ」が始まったのが1962(昭和37)年で、民放テレビ各局の開局からまだ10年ほどのころ。アンカー役を務めたのが、田英夫(でん・ひでお)、戸川猪佐武(とがわ・いさむ)とそれぞれ共同通信、読売新聞記者出身、さらに毎日新聞一面コラム「余録」のコラムニストだった古谷綱正(ふるや・つなまさ)、朝日新聞の「天声人語」コラムニスト上がりの入江徳郎(いりえ・とくろう)とそうそうたる顔ぶれで、いずれも重厚感あるアンカーマンだった。

いま、テレビ各局は夜のニュースショーに力を入れるが、いずれもアンカーマン不在である。各局とも画面上の見た目もよく、司会進行やニュースの伝え方は派手で視覚的でよどみない。だが、いずれも重厚感に乏しく、ニュースの見方も平板で、軽い。時代を斬り、視聴者に訴えかける熱情が乏しい。

アンカーマン不在がニュースショーをつまらなくしていると思うが、どうだろう。

 

サガテレビ解説主幹
宮原拓也

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