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2020.10.28

じじぃ放談 8 「図書館は大事でしょ」

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図書館や本屋で書籍に囲まれていると、なぜか落ち着く。理由はわからない。本屋で本を探していると、なぜか無性にトイレに行きたくなるのも因果関係があるのだろうか。「もともと人間も動物だから、紙の原料である木に囲まれているように人間の本能が感じるんだよ」と奇妙な解説をする友人もいた。嘘っぽいが、一蹴するには惜しい気もする。

佐賀県基山町の町立図書館は、人口2万人未満の全国の町立図書館の中で、貸し出し冊数全国一を誇る。町は佐賀県東部に位置し、福岡との県境にある。4年前、以前からあった図書館を中央公園内に移転・新築した。建屋は、TSUTAYAに委託して全国の話題となった同県武雄市図書館と同じ設計者に依頼したが、運営の中身は「非民営」路線で、「市民が育てる図書館」を掲げる伊万里市図書館と同じコンセプトを掲げる。

図書館の来館者に対して、図書利用のための情報や資料を提示するなどのアドバイスをするのが、図書館司書の役割だ。図書館にとって最も大切な機能で、レファレンスという。ここの図書館長である城本直子さんは、おそらく全国的にも珍しい図書館司書上がりだ。1988年、司書として町に採用されて以来、司書一筋。9年前に図書館係長となって新図書館建設準備を進め、昨年4月に館長になった。司書たたき上げらしく、図書館にはいい司書が必要で、司書を育てるのには時間がかかります、と力説された。

データはやや古いが、2004年の文科省調査によると、全国の町村立図書館の数は、同年までの10年間で618館も増えている。ただ、気になるのは、図書館の数は増えているのに、図書の購入費と専任の司書らの数がいずれも減少していることだ。1995年から2002年までの7年間のデータを見ると、全国で2266館から2736館へと470館も増えたのに、全体の資料費、つまり書籍などの購入費は330億円から326億円へと4億円減。司書・司書補の人数も、同時期で6584人から6039人となり、何と545人も減っている。さらに言えば、公立図書館全体のうち、4館に1館は司書が一人もおらず、レファレンス用の独立カウンターや窓口のない図書館は、全体の4分の3もあるというから驚く。

住民サービスのため、図書館は欲しいが、カネはかけたくない。そのため、図書館運営専門会社に運営を委託する民営方式を採用する自治体が増えた。蔵書数は増え、カフェを併設するなど明るく入りやすくなってはいるが、図書館本来の機能であるレファレンス部門はカネも人もかかるため、効率優先でカットされてしまう。

図書館の司書をどう位置付けるのかは、古くて新しい問題である。ただ、おそらく選挙の票にならないだろうから、政治家はだれも取り上げようとしない。ならばそれぞれの自治体が踏ん張るしかない。城本館長は「図書館づくりは町づくり、なんです」と言われた。その通りである。

サガテレビ解説主幹 宮原拓也

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