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2020.09.15

じじぃ放談7 都会的より田舎的?

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国家を統べる首相も、会社を動かす社長も、国民や社員のための明確なビジョンが欠かせない。国も会社も、破たんしない限り続いていくから、今のかじ取りが5年後、10年後にじわりと効いてくる。特に今は、新型コロナウイルス騒動もあり、目の前を飛ぶハエを追い払うかのような、目先の策に忙殺されてしまい、将来を見据える目がうつろになっているリーダーが多い。

日本はいま、人口減に向かう坂に差し掛かっている。100年前の明治時代後半にざっと5000万人だった人口は、ずっと右肩上がりで増え続け、ほぼ100年間で1.5倍の1億2800万人までに膨れ上がった。しかし、われわれが乗るジェットコースターは今、車輪がカタカタと音を立てて頂上から下りに入り、100年後、22世紀を迎える2100年初頭には、かつての明治期の人口規模に逆戻りする、と総務省は予測する。

ただし、もっとさかのぼると、かなり趣が違う。鎌倉から室町、そして戦国の世の人口は、今の10分の1、1000万人弱しかいない。17世紀、江戸時代に入るころに1200万人台に乗り、平和な江戸期で3000万人台へと増えてはいるが、明治初頭も3300万人と人口曲線は緩やかだ。つまり、明治維新を経て戦争の世紀、そして戦後の昭和、平成にかけての人口急増期は、日本史的には極めて珍しい時期なのだ。

この「異常」な人口急増の時代の価値観に、われわれは今もどっぷりと浸っている。子どもが増えるのは何よりめでたいし、人口が増える町は栄える町。きらびやかな都市の生活は、文字通り「都会的」で、逆に田舎は「田舎臭い」。都市が地方の人材を吸い寄せ、大量生産による経済成長で富をはぐくんできた。カネが動けば、人もモノも動く。高速で大量の輸送こそ価値があり、低速、小量、非効率をこぞって切り捨ててきた。

こうした時代の曲がり角が、まさに今である。人口が既に加速度的に減り続けている。今年は昨年に比べて50万人減った。鳥取県がそっくりなくなった計算で、第二次安倍政権が始まった2012年からだと324万人減っている。8年間で長崎と宮崎と佐賀の3県が消滅した計算だ。出生率も低迷したままで、働き盛りの若者が減り、お年寄りは増え続ける。

日本人の価値観も大きく変化していく。大都市の若者が減り、老人が増えるから、「都会的」という言葉は「古臭い」とか「活力がない」というネガティブな意味に変わる。逆に地方の頃合いの人口の中都市には、自然とともにゆったりとした暮らしを楽しむ若者が集うから、「田舎臭い」は「時代に先駆けた」とか「人間らしい」という意味になる。高速大量輸送の代表的インフラである新幹線やリニアモーターカーは、「時代遅れの」とか「無意味な」という風に使われるに違いない。何しろ、人口減で乗る人がいなくなるからだ。

人口増時代の価値観を振り払い、少人口時代を見通す眼力を今、身に着けたい。

 

サガテレビ解説主幹
宮原拓也

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