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【戦争の記憶】『耳のウジ虫をとってください』 原爆救護看護婦の消えない心の傷

2022/08/15 (月) 15:11

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太平洋戦争が終わってから77年。日本はその後、他国と戦火を交えていませんが、ウクライナ侵攻など戦争・紛争は絶えません。サガテレビが過去に取材した人の記憶を振り返り、改めて戦争、そして平和について考えます。

≪2021年8月10日放送≫
(年齢は放送当時)

今から76年前、原爆投下の翌日に佐賀から負傷者の治療に救護看護婦として長崎に入った女性。「足の踏み場も無かった」という当時の光景とその後の体験は、いまも心に深い傷跡を残しています。
76年前の8月10日、撮影された写真。写っているのは、日本赤十字社の救護看護婦です。被爆して傷ついた多くの人を懸命に治療しています。

「刺さったガラスを全部抜いている。大きいところだけしか取れない。とにかく患者の治療を早くしなくてはいけないのでもう無我夢中というか…」

西久保キクノさん95歳。写真に写っていた日赤の救護看護婦です。1945年8月9日。アメリカ軍が長崎に原子爆弾を投下。その年の12月までに、7万人以上の人が命を失いました。当時は佐賀陸軍病院に勤務していた西久保さん。長崎へ向かうよう命じられます。

「4時半の汽車で長崎まで行った。すれ違う列車の中の人たちがシャツが血まみれになって乗っていた。これは何だろうかと。ただごとではないと感じた」

長崎に到着したのは、原爆投下翌日の昼過ぎ。爆心地から約3.5キロにある「道ノ尾駅」には、数えきれないほどのけが人が寝かされていました。

「駅前の広場は足の踏み場もない。むしろの上に患者をずらっと並べて休ませていた。私が一番初めに仕事をしたのは、爆風で折れたクスノキが丸太のまま女性の左の尻に刺さっていた。それを衛生兵と2人で抜き取った」

全身をやけどした人…、大量のガラスが刺さった人…。無我夢中で手当てしました。

「普通患者の名前を聞いて『痛かったでしょ』とか言うけど、言葉をかける余裕がない。患者が多くて。こんなこと言ったら悪いが、”機械的”に仕事をしないといけない状態だった」

その後、各地の学校や救護所を回った西久保さん。線路上を歩いたときには、亡くなっている赤ちゃんを見つけました。

「ああ、どこからか吹き飛んできたんだろうな、と思った。どこに連れていっていいか分からないし、そのまま放置して行ったのが未だに心に残って、あれでよかっただろうか、と思う」

その後、向かった防空壕にも手当てを待つたくさんの負傷者がいました。

「そこでは一番気が重かった。防空壕にずらっと十何人ぐらい並んで休んでいた。入口あたりにいた人が『看護婦さん、耳のウジ虫をとってください。ウジ虫が動くと頭に響きますから』と。それをいくら取っても取っても、次から次に湧いてくる。1日目は何とか治療して2日目見たときは1人だけ生きていて全部亡くなっていた」

8月15日。手当てに明け暮れていた西久保さんは終戦を告げるトラックが走るのを見て、戦争が終わったことを知ります。

「軍の命令だから引き上げないといけない。これだけの患者を残して帰っていいものだろうか、と後ろ髪を引かれるような思い」

本当に戦争が終わったのか、半信半疑のまま列車で佐賀へ戻りました。戦争は終わりましたが、戦後も西久保さんは悲劇に見舞われます。

「これが高校卒業の時の写真です」

西久保さんは、終戦後に生まれた長男の秀紀さんを21歳の若さで亡くしました。白血病でした。

「自分が原爆の救護に出たから、この子が…とすぐ思った。病院の先生に聞いても『それとは関係ない』と言ったけど、どうしても『私のせいだろう』と責任を感じる」

スポーツ万能で、思いやりにあふれていた秀紀さん。

「生まれたときから女の子のように色が白くて、かわいらしくて、大きくなっても優しかった。ほんとに優しい子でした」

秀紀さんが亡くなった後、西久保さんは看護婦を辞めました。しかし、半世紀すぎても自責の念は、今も消えることはありません。

「夢枕に立たない。50年間。夫の夢やほかの夢を見ても、その子だけ全然出てこない。だから子どもが恨んでいるんじゃないかと思っている。一回夢に見て会って死にたいといつも思っている。枕をつけたら『今晩夢に出てくるかな』と毎晩毎晩それを思って…だけど全然出てきません」

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