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70年以上前の「大規模地すべり」を忘れない…二度と同じ悲劇が起きないよう願う住民【佐賀県伊万里市】

2023/02/14 (火) 18:50

シリーズでお伝えしている「災害・私の記憶」。今回は、1951年に伊万里市山代町乙女地区で起きた大規模な地すべりについてです。当時を知る住民は、二度と同じ悲劇が起きないよう今も強く願い続けています。

【川口喜似さん】
「よく助かったなと思う、あれが夜明けだったから良かった」

今から70年以上前の1951年2月16日、伊万里市山代町の乙女地区で発生した大規模な地すべり。その1週間ほど前の2月8日から15日にかけて81.6ミリを記録するまとまった雨が降り続いたことが影響したと言われています。
今も乙女地区に住んでいる川口喜似さん、87歳。当時、中学校3年生だった川口さんはこの地すべりを目の当たりにしました。

【川口喜似さん】
「がたんがたんと石が高いところから落ちる。じわじわ滑ってきて谷が十数メートル埋まった」

【川口喜似さん】
「あのクヌギの木の上の方に(当時住んでいた家が)あった」

川口さんは、16日の朝、「上の方にある家が埋まっているから助けに行ってほしい」と近くの住民に呼ばれたことで地すべりに気付きました。助けに行こうとしましたが危険すぎて断念、避難するしかありませんでした。

【川口喜似さん】
「縦道があってずっと下がって行くと川がある、川の飛び石を渡って丘に登って高台に逃げた」

16日から17日にかけて27戸の家屋が全壊した乙女地区。じわじわと地すべりが起きたため、屋内では音があまり聞こえず気づきにくかったといいますが、夜明けで起きていた住民も多く、気づくのが早かったのが被害を大きくしなかったとも言われています。しかし、最初に地すべりに襲われた家に住んでいた親子3人が行方不明になりました。このうち1人は幼い頃から仲が良かった川口さんの同級生だったといいます。

【川口喜似さん】
「いつものようにうちに泊まっていればその時助かっていたのに、縁がなかった、惜しかったねと」

乙女地区の6年後、隣の西大久保地区でも7人が犠牲となる地すべりが発生。これらがきっかけとなり、1958年、国が「地すべり等防止法」を制定。西大久保地区や乙女地区を含む一体は「地すべり防止区域」となり、2002年度まで対策工事が行われました。

当時の記憶を風化させないよう地すべりで落ちてきた石を使い作られた石碑です。

【川口喜似さん】
「よく助かったなと思う(起きたのが)夜明けだったから良かったけど夜中だったらおそらく全滅だった。これは一生忘れられない石碑だから大事にして守っていかないといけない」

川口さんは、大規模な対策工事が行われ不安が和らいだと話す一方で、あの日見た光景や失った友の存在を今でも思い出し、地区の安全を願い続けています。

【川口喜似さん】
「地すべり工事を何億もかけてしているからこれで大丈夫だろうとは思う。もう二度とあんな悲惨なことがないように祈る」
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