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土壌微生物に魅せられ40年 ”土のお医者さん”病害発生のリスク抑える力や地力など診断【佐賀県】

2024/07/18 (木) 18:18

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シリーズでお伝えしている「さがリサーチα」
農業にとって最も大切といわれる“土づくり”その多くが生産者の経験や勘を頼りに行われているといいますが、機械を使った測定を通して病害のリスクを事前に知る方法もあります。研究に取り組む男性を取材しました。

自宅で飼育しているヤギたちにエサをあげている伊万里市在住の夫婦。
自宅にお邪魔させてもらうと…「こちらが分析室です」

土壌診断用バイオセンサー研究会代表の橋本好弘さん65歳
“土のお医者さん”として活動しています。

【土壌診断用バイオセンサー研究会 橋本好弘さん】
「先端のところは企業秘密で特許に関係するので(撮影は)ご遠慮ください」

橋本さんが行うのは“土の健康診断”
病害発生のリスクを抑える力や水田の地力などを診断し、数値化。
化学肥料や化学農薬に頼らず有機肥料を使った土壌の改良を提案しています。
生産者はもちろん、大学や肥料メーカーなどの依頼を受け、年間の診断数はのべ100件にのぼります。

「何か片づけるものありますか~」

そして、この活動を全力でサポートしているのが妻の禎子さん、頼もしい助手です。
夫のサポートは今流行りの“推し活”だと話します。

【妻・禎子さん】
「ずっと思いが強くて続けたいと思っているのをそばで見てきたので、やっぱり応援したいという気持ちが強い」

進学した大学や大学院で土壌微生物の魅力に引き込まれた橋本さん。
しかしこの分野の研究は容易なものではありませんでした。

【土壌診断用バイオセンサー研究会 橋本好弘さん】
「あまりにも土壌微生物が複雑で多様であるから、そこがブラックボックスのままだとこの技術はなかなか進展しないということがわかり、土壌微生物の生物性のことをきちんと調べる必要があると考えていた」

転機は2001年神奈川県にある種苗会社に転職し産学官連携による研究プロジェクトが始動しました。
バイオセンサーを用いた土壌診断に成功し、特許を取得、製品化もしました。
当時、橋本さんはプロジェクトで研究を進めながら農学の博士号も取得、順風満帆な人生だと思っていました。しかし…

【土壌診断用バイオセンサー研究会 橋本好弘さん】
「まだその当時は化学農薬と化学肥料を使って作物生産ができれはいいという考えの人が圧倒的に多かったので」

今から10年以上前、橋本さんたちの斬新なアイデアは世の中には受け入れられず道半ばでプロジェクトは撤退しました。

【土壌診断用バイオセンサー研究会 橋本好弘さん】
「ちょうど退職するときだったので、装置を譲り受け、こちらで起業してやってみようかと」

60歳を過ぎ退職した後も土壌診断への思いは薄れるどころか高まるばかり。
2020年には妻のふるさと伊万里市に移住し翌年には自ら会社を設立、“土のお医者さん”として活動を始めました。
そして今年新たに開発した装置が稼働を始めました。

【土壌診断用バイオセンサー研究会 橋本好弘さん】
「土壌微生物が健康でたくさんいる状態の土だと外から侵入してきた微生物を抑え込む力が非常に強い」

【土壌診断用バイオセンサー研究会 橋本好弘さん】
「これで20分このまま置いておきます。ここで見てわかるように酸素濃度が減ってきているのがわかります」

20分後、それぞれの土の酸素消費量を測定しその差を比較することで、土の健康状態、つまり免疫力の強さがわかります。
この日、橋本さんは市内の生産者のもとへ向かいました。

【土壌診断用バイオセンサー研究会 橋本好弘さん】
「土壌粒子が荒いか粒が細かいか、砂質なのか粘土質なのかざっと見る」

50年近く農業経験のあるこちらの男性、土の健康診断を4回ほど利用しています。

【農業歴48年目の男性】
「土づくりは最初から用心している。連作にするんだったら、微生物を入れるか、土壌診断で情報をいただければ」

キュウリ栽培2年目のこちらの男性は土の健康診断を初めて利用しました。

【橋本さん】
「あす、明後日分析して」
【井手さん】
「そんなにすぐわかる?今まで肥料屋さんに出していたけど2週間くらいかかっていた」
【橋本さん】
「うちの分析は早いので、1日2日で結果が出るので」

これまで、土壌サンプルを分析するには研究室が求めるような本格的な方法しかなく、費用が数万円超えるのはもちろん1カ月以上の期間がかかっていました。
一方、橋本さんの土壌診断は1つのサンプルにつき3000円で、1週間以内に結果が届くのも大きなポイントです。

この日、橋本さんのもとにやってきたのは福岡県筑後市でイチゴを栽培している生産者3人です。
橋本さんは土づくりで活躍する土壌微生物をもっと身近に感じてもらおうとオリジナルのキャラクターを使ってわかりやすく説明します。
訪れた3人は土の健康診断はすでに済ませていますが、悩みや相談したいことは尽きないようです。

【視察に来たイチゴ農家(4年目)】
「土壌消毒の資材はコストもかかるのでこれを毎年やっていった方がいいのか、病害が出ていない以上はそこまで気にしなくていいのか」
【橋本さん】
「ハウスごとに分けて、ここは安全だ、ここはちょっとリスクがあるというのを見てから対策を変えていった方がいい」

約2時間の視察はあっという間に終わりました。

Q.土も健康診断大事?
【視察に来たイチゴ農家(6年目)】
「それはもちろん。いま、せっかくそういう技術があるんだから、農業者としては活用しながら収益を上げる必要があるのかな」

1グラムの土の中で100億をこえるという土壌微生物、そんな多種多様な土壌微生物に魅せられ40年あまり。
橋本さんはこの研究を“ライフワーク”だと話します。

【土壌診断用バイオセンサー研究会 橋本好弘さん】
「非常に良い技術なので、私の代で終わらせることなく、次の世代につないで、より大きく発展させていただけるような形になればいいな」

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