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特攻兵器を製造していた伊万里市の「川南造船所」遺産として保存へ尽力した87歳の男性【佐賀県】

2024/08/13 (火) 18:35

シリーズでお伝えしている終戦企画。今回は小学生の時に戦争を経験し、地元伊万里市で戦争遺産の保存に尽力する87歳の男性。川南造船所でつくられていたのは人の命を兵器の一部として組み込んだ特攻兵器でした。

小型の潜水艦の前で笑顔で写真に収まるアメリカ兵。いまから79年前、昭和20年(1945年)9月に日本国内で撮影されたものです。
小型の潜水艦の名前は「海龍」。大量の爆薬を積み敵の船目掛け攻撃を仕掛け、乗組員もろとも自爆するいわゆる特攻兵器でした。

【金子義弘さん】
「これあの、正門じゃないんですよ。正門はもっと向こうの川の近くにあった」
Q.正門はまだ残っているんですか?
「残ってないです。こんだけですね。」

この特攻兵器がつくられていた跡地を保存しようと活動している人がいます。伊万里市に住む金子義弘さん。1937年生まれの87歳です。

【金子義弘さん】
「私が小学校2年生だったかな。終戦がね。私の父が満州事変に召集されて、肩やられて」

伊万里市山代町にある川南造船所跡。伊万里湾に面し、元々はガラス工場でした。昭和15年(1940年)に造船所となり佐世保海軍工廠の指定工場として主に輸送艦を製造。当時は2500人ほどが働いていたとも言われています。太平洋戦争終結直前、海龍をつくっていた工場の一つです。

【金子義弘さん】
「いわゆる魚雷を作っていた。海龍という特攻兵器なんですよね。一番先端に爆薬をしっかり詰めて体当たりですよ」

昭和20年(1945年)太平洋戦争も終盤になると、日本は物量に勝るアメリカをはじめとする連合国に押され、本土への空襲が激化していました。アメリカ軍の日本上陸の可能性が高くなり、本土決戦を見越した陸海空の特攻兵器の製造が各地行われていました。

【金子義弘さん】
「実際に完成品が4艇か、完成していたみたいですけどね。あと10艇ほどが製作途中で」

しかし、広島、長崎の原爆投下後に終戦を迎えたため、「海龍」も実戦で使用されることはなかったということです。
軍需工場だった川南造船所も戦後1955年に破産。以降60年にわたり廃墟となっていました。

【金子義弘さん】
「実はこの廃墟から人体が1体出てきたんですよね。それで地元も、はよ撤去してしまえと」

戦後、伊万里市で小中学校の英語教師として働いていた金子さんが、戦争遺産の保存に力を尽くし始めたのは今から約40年前。

【金子義弘さん】
「地元の人も知らない人が多くなってですね、よその人がよく写真撮りに着て『これなんの跡ですか』とよく聞かれてですね。『川南造船所跡ですよ』とそこまでは言えてもあとは何もわからんもんですからね。それが発端で調べ始めたんですけどね」

伊万里市は2011年に保存か、解体かを決める検討委員会を設置。

【金子義弘さん】
「その中に私も入ってたもんですから。絶対解体せんで残そうとだいぶ頑張ったんですけどね」

廃墟となった建物の危険性を訴える地元住民の意向を尊重し、一部を残し解体する方針が決まりました。

【金子義弘さん】
「もう海岸が見えないくらい草が」
Q.虚しさもある?
「そうですね」

なんとか門だけでもと残された跡地にある看板も金子さんが書き示したもの。
そして様々な資料をかき集め、4年前に川南造船所の歴史を一冊にまとめました。一度も使われなかった特攻兵器「海龍」。人間の命を組み込んだ兵器が伊万里でつくられていた記憶は確実に薄れつつあります。

【金子義弘さん】
「戦争に直接、行った方はほとんどおられないですもんね。だから、その辺のことをもっとぴしっとまとめないかんなと思っていますね。写真で取っちゃかよかたいという声も多かったんですよ。でもやっぱり歴史遺産というのは実物が一番物語を語るのは最高の資料であって」
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