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じじぃ放談15 逃げるか、逃げないか
秋、総裁選真っ盛りである。菅政権誕生からまだ1年。突然の菅氏降板に、某ドイツ紙は「令和おじさんはもう忘れ去られた」と皮肉った。言葉を持たぬ、国家観や歴史観を持たぬ、とあれこれ言われるが、もともと裏舞台で操るフィクサー役でのし上がってきただけに、そんな批判も詮無い。逆にコロナ対策ではある意味、その強みを生かした面もある。
時すでに遅し、ではあるが、こんな開き直りの一手もあったのではと妄想する。
「コロナ対策は私であれ次期総理であれ、どうやっても批判される。将来のある次代の総理たちもコロナの餌食にするわけにはいかない。ここはひとつ、私がコロナ批判をすべて引き受ける。コロナ管理内閣を引き続きやり、コロナ終息後に必ず、次世代に道を譲る」
顔に力のないままの首相を見るにつけ、こんな最後のひと太刀という選択肢もあったのではないかと思う。むろん、目前に控える衆院選を前に、この低支持率では現実味はない。ただ、八方ふさがりのコロナ禍で、後継の新総理もまた撃沈しそうな予感大である。仮に菅総理がこう開き直っていれば、少なくとも現状から「逃げた感」は薄まる。
話は飛ぶが、菅総理の「逃げた感」どころではなく、一目散の逃走劇を見せたのがアフガニスタン駐在のわが国の大使館員たちだった。新聞報道によると、タリバンが国土を掌握するや、身内である現地人スタッフたちを残したまま、あっという間に国外に退避した。同じアフガン大使でも、英国のブリストウ氏なる男は、部下の大使館員たちの出国後も居残り、自国に協力してくれたアフガン人たちに出国ビザを出し続けたという。かつてリトアニアで、ナチスから逃れるユダヤ人たちに「命のビザ」を出し続けた日本の外交官・杉原千畝魂を、少しは見せて欲しかった。
ワクチン接種でも「逃げた首長」たちが問題になった。市民の接種もままならないのに、市長自ら「一足お先に」とワクチンを打ったケースが全国で相次いだ。「私が感染すれば、市政が停滞する」と68歳の市長。「私は医療従事者に当たる」と不可思議なコメントは、76歳の町長だった。市長も町長も同じ市民、町民である、というのが市民感覚なのに。
ただし、今となってはこうした「逃げる首長」はかわいいものかもしれない。もともとワクチンという存在そのものが、病気から逃げおおせるためのもの。カネで買える先進国は「2回目の次は3回目を」と主張して逃げ切りをはかるが、世界保健機関のテドロス事務局長は先日、先進国の3回目接種の中止を呼び掛けた。アフリカ諸国など低所得国の接種率は、いまだに1~2%。世界200国余のうち、わずか10か国が世界のワクチン75%を占有しているというから、世界のワクチン格差は隠れた大問題である。
逃げてもいいが、逃げられない人たちがいることも、頭の片隅に置いておきたい。
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