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2025.04.01

市民の廃食油がアスファルトに!多久市のカーボンニュートラルな取り組み

多久市で、家庭から出る使用済み食用油をリサイクルし、アスファルト製造の燃料として活用する、全国でも珍しい取り組みが始まっています。2024年4月に「多久市ゼロカーボンシティ宣言」を宣言した多久市は、この取り組みを通じて、市民一人ひとりが環境保護に貢献できる持続可能な地域社会を目指しています。

「捨てるだけではもったいない!」から生まれた廃食油リサイクルの輪

多久市のスーパーマーケット「HIヒロセ」や「中央公民館」に設置された回収ボックス。そこには、「使い終えた食用油をペットボトルに入れて持ってきてください」と呼びかける垂れ幕が掲げられています。多久市役所環境課の伊藤賢一さんは、「これはご家庭で使用された油を回収するためのボックスです」と説明します。

多くの家庭で処理に困る使用済み食用油。しかし、多久市ではこの「捨てるはずだった資源」を有効活用し、カーボンニュートラルにつなげる取り組みを進めています。市民が持ち寄った廃食油は、地域を巻き込んだ大きな循環を生み出しているのです。

アスファルトプラントが鍵!驚きの再利用方法

この取り組みは多久市だけで完結するものではありません。基山町にある「田中鉄工株式会社」という企業との連携が、プロジェクトの成功に大きな役割を果たしています。田中鉄工はアスファルトプラントメーカーです。一見すると、家庭用の食用油とアスファルト製造に関連性はないように思えますが、そこには驚くべき繋がりがありました。

回収された廃食油は、田中鉄工で、アスファルト合材の製造燃料として再利用されます。

田中鉄工の陣内太さんは次のように説明します。「弊社は、アスファルト舗装材を作る時に燃料として重油という化石燃料を使用しています。その重油に、地域から出る使用済み食用油、いわゆる廃食油をバイオマス燃料として混ぜて使うことで、燃焼時に発生するCO2を削減する取り組みをしています」

つまり、重油の量を減らすことでCO2削減に繋げています。

驚きの混合率!廃食油が主役に

現在、田中鉄工では「重油6:廃食油4」という割合で混合して使用しています。しかし、これは始まりに過ぎません。「新型バーナーを使うと、この廃食油の割合を最低8割ぐらいまで増やすこともできます」と田中鉄工の陣内太さんは語ります。これは驚くべき数字です。アスファルト製造に使用する燃料の大部分を、私たちの家庭から出る廃食油で賄えるということです。

多久市の特徴が生んだ相乗効果

この取り組みが多久市で特に効果を発揮する理由があります。「実は多久市は、人口あたりのアスファルトプラントの台数が日本一なんです」と陣内さんは明かします。多久市の産業部門から発生するCO2の約10%がアスファルトプラントから排出されているということです。

市民参加が鍵!「自分ごと」として実感できる循環型社会

日本では、家庭から出る廃食油の年間発生量は約10万トンと言われていますが、リサイクル率はわずか4%。多久市の取り組みは、この未活用資源を有効利用する先進的な事例として注目されています。

「市民の方々が、自分が今歩いている道路が、この間リサイクルした廃食油で作られているんだという実感を持っていただくと、リサイクルへの貢献実感がどんどん高まっていくと思います」と伊藤さんは語ります。

さらに、多久市のアスファルトプラントに廃油油を利活用できる施設が導入されれば、「地産地消」のように循環型社会にも貢献できます。つまり、この取り組みは多久市のカーボンニュートラル達成に大きな影響を与える可能性を秘めているのです。

家庭から出た廃食油が、地域の道路や歩道を作る燃料として還元される。市民、行政、企業が一体となって地域資源を循環させることで、環境負荷の低減と地域活性化を両立させることを目指しています。

未来へつなぐ多久市の挑戦

多久市は、2024年4月の「多久市ゼロカーボンシティ宣言」を機に、さらに多くの市民を巻き込んだ環境保護活動を展開していく予定です。

使用済み食用油のリサイクルを通じたカーボンニュートラルへの取り組みは、多久市の環境保護への熱意を象徴する活動の一つです。私たちの身近な生活から始まるカーボンニュートラルへの挑戦。多久市から広がる持続可能な未来に、期待が高まります。

【2025年3月26日放送 かちかちLIVE 知ってる?カーボンニュートラルより】

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