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2019.12.16

豪雨被害から営農再開を決断したナス農家 目の当たりにした「見えない爪痕」

8月の豪雨から2019年11月28日で3カ月。小城市では牛津川の氾濫で農地の浸水被害がでました。この地域で営農の再開を決断したナス農家がいます。3カ月経った今も豪雨の爪痕が残る農地で、栽培に励む男性の姿を取材しました。

小城市のナス農家・松尾さん

5棟のハウス、約4000平方メートルでナスを栽培している小城市牛津町の農家・松尾祐亮さん。この3カ月間、自分の畑のハウスの復旧に汗を流しました。

松尾さんは、豪雨の3日前、2019年8月25日に2つのハウスにナスの苗を植えたばかりでした。
「今年はもうやばいな、作れないなと思った。」と豪雨当日の心境を振り返ります。

「汚水と泥土によって浸水しているから土壌の状態は目に見えないものなので、その懸念は結構ある。今後作ってみてどうなっていくのか心配が大きい」と話す松尾さん。
植えた苗は全滅温度を調節する設備などほとんどの機械も冠水して壊れてしまい、被害総額は計り知れません

しかし、若手農家の仲間と協力して農地を修復し、浸水被害を受けながらも栽培再開を決断。例年より1か月ほど遅い9月にナスの苗を植え直しました。

9月に取材したときは30センチほどだったナスの苗が、11月には約2メートルの高さまで成長。

しかし、松尾さんは「本来であれば10月末で成長している高さ。でも11月末でも成長していない」と話します。例年の同じ時期とは成長に30センチ程の差があり、それだけで果実の採れる量が違ってくるそうです。

10月15日に始まったナスの収穫は11月中旬からピークを迎えています。それでも、例年の同じ時期に比べると収量は3割から4割ほど少ないのが現状です。
松尾さんは「作付けが遅れた分、生育は悪いだろう、収量もそんなに上がらないだろうと思っていたけど予想を超えていた。こんなにも背丈の伸びが悪いというのは植えないと分からなかった。」と現状を語りました。

さらに、収量の減少は「目に見えない豪雨の爪痕」も影響していました。
豪雨の影響で病気になった株が数本見つかったのです。
病気の原因について松尾さんは「豪雨の時に水に浸かったことで雑菌が土の中に繁殖した。土の中に水が多く酸素は少ない。ナスの生育にとってはよくない条件だった。」と話しました。

他の株へ病気がまん延するのを防ぐため、見つけ次第すぐに根元から切って撤去。現在は全体の1割ほどですが、気温が高くなる2020年3月以降、さらに増える可能性があるといいます。
松尾さんは「今後どれだけこの病気が増えるのかが怖い」と不安を口にしました。

また、豪雨による浸水で大きな被害受けたのが機械類。決して元通りとはいかないものの、松尾さんが栽培するにあたって求める機械はほぼ新調したそうです。
豪雨の被害を受け、対策として「機械は今の位置より50cmから1m上げる」そうです。

僕は栽培をできた分よかったと思う。今年、自然災害は佐賀県ですごく多くて僕を励ましてくれた先輩、知人の中にも塩害の被害を受けた人もいる。僕だけではないんだと思った」と、災害に遭ってからの事を振り返る松尾さん。「今年はスタートが遅れたのでゴールまでの間にいかに取り戻すかが今年の目標。今後は災害で負けないような経営作りをしていきたい」と、今後の目標を話してくれました。

水害というリスクを抱えながらも松尾さんは前を向いています。

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