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70年前の大水害「28水」 過去の災害を忘れず命を守ってほしいと住民が1冊の写真集を作成【佐賀県】

2022/05/17 (火) 18:30

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約70年前、県内を襲った大水害「28水」。
過去の災害の記録を通して、自分の命を守ってほしいと、佐賀市の住民たちが1冊の写真集を作りました。

【瀬戸邦聰さん】
「自然はいいものだけど、いつかそれが非常に危険な状態になるということを忘れてはいけない」

佐賀市鍋島町に住む瀬戸邦聰さん80歳。
瀬戸さんは、住民同士の交流と親睦を図る活動をしている鍋島まちづくり協議会の会長を務めています。
2019年8月に起きた佐賀豪雨を受け、協議会でも何か活動をしようという声が上がりました。

【瀬戸邦聰さん】
「防災の方に力を入れて、何かやろうと。そういうことを話し合っていたところ、公民館にそういう写真集があると聞いた。これまで遭ったこともひとつ振り返ってみようということになって」

公民館に保管されていた写真は、昭和28年、1953年6月下旬に県内を襲った大水害、いわゆる「28水」を写したものでした。
県内では4日間で当時の1年間の雨量の半分近い雨が降り、各地で河川が氾濫し堤防が決壊。
死者59人・行方不明者3人の被害が出ました。
鍋島町でも、嘉瀬川の堤防が約250メートルにわたり決壊し、町の大部分が水に飲み込まれ、1人が亡くなりました。
鍋島公民館に、保管されていたアルバムには、当時の役場の職員などが撮ったとみられる写真が約190枚収められていました。

【鍋島公民館 大野修館長】
「これが災害の写真というのはわかったんですけど、それがどういうところで、どういう状況なのか、そういうところが全然わかっていなくて」
「公民館としてはせっかくこれだけの数多い写真があるので、それをどうにか後世に残して、鍋島校区の防災につなげていきたいと」

過去の災害を語り継ぎ、防災につなげようとまちづくり協議会と公民館の意見が一致し、2020年11月、28水の記録を残す写真集を作る委員会を立ち上げ、50代から90代の住民など、13人が編集委員となりました。
作るにあたり大変だったのが、これがどういった写真なのか。
写真にはメモがなく、編集委員たちは、当時を知る約40人に話を聞き、記憶を頼りに1枚1枚写真をひもときました。

【瀬戸邦聰さん】
「写真を組み合わせたり、遠くの風景を見て、ここが見えるのはこの家だろうと。『だいぶ記憶も薄れてきているけど』と言われる方も多かったけど、やっぱり忘れられないことだから」

地道な作業を続け、1年ほどかけて2021年10月に出来上がったのが、「昭和28年鍋島水害写真集」です。
写真集は147ページ。堤防が決壊し、水に浸かった町。復興に取り組む様子を写した写真が掲載されています。
また、旧鍋島町誌や、地域の公民館に残る住民の手記などもまとめられていて、被害の大きさが住民目線で伝わってきます。

【溝口政文さん(当時6歳)】
「どす黒い濁流が怒涛の勢いで家屋の一部や家財、農具、稲わらの束など、あらゆるものを押し流すさまを前にただぼうぜん自失。大水害の猛威に全身の震えが止まらなかった」

決壊した堤防の復旧は、手作業で行われ、他の地域の人なども駆けつけ、約4万5千人が復旧にあたりました。

【瀬戸邦聰さん】
「堤防を作るその状況ですね。本当に苦労されたというのがよくわかって、感動した。ここに土のうをずっと入れていく土のうを入れるための様子。60キロもある土のうを担いで、みんなで」

完全に水がせき止められたのは、決壊から約1カ月後。
失われた田んぼを取り戻すための作業も手作業でした。

【当時鍋島村青年団 長雪竹敏光さんの手記】
「7月23日、堤防閉め切り作業は、激流との戦いだった。土のうを1俵1俵担いでの人海戦術と呼ばれるせき止めだった。終わると皆で万歳万歳と叫んだ」

被災から復興までを記録した写真集。最後は次の言葉で締めくくられてています。
「この一冊が、「過去(水害)」に学び・「現在(豊かさ)」を知り・「未来(備え)」につながれば幸いです」
瀬戸さんたちは、鍋島町が水害から復興した歴史を知ってもらおうと、写真集を地元の小中学校や図書館などに寄贈。
写真や当時の言葉を通して、改めて自然の脅威を伝えます。

【瀬戸邦聰さん】
「そんな苦労をして立て直して、今があるということを皆さんが知った上で、自然というのは非常に怖い面もあるということをぜひ心に刻んでおいてもらいたい」

この写真集ですが、地元の小学校で児童に読書感想文を書いてもらうという話も進んでいるそうです。
昭和28年鍋島水害写真集は、佐賀市立図書館で借りることができるということです。

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