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【戦争の記憶】 赤ちゃん抱えた母親の地獄 満州引き揚げの凄惨な光景

2022/08/12 (金) 07:00

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太平洋戦争が終わってから77年。日本はその後、他国と戦火を交えていませんが、ウクライナ侵攻など戦争・紛争は絶えません。サガテレビが過去に取材した人の記憶を振り返り、改めて戦争、そして平和について考えます。

≪2019年8月12日放送≫
(年齢は放送当時)

太平洋戦争の戦時中、現在の中国東北部、満州には、200万人もの日本人が渡ったとされますが、敗戦後、日本に引き揚げる道のりは、過酷なものとなりました。その記憶を吉野ヶ里町の女性が語りました。

自宅で友人たちと麻雀を楽しむ岡規美さん87歳。岡さんは現在のみやき町にあった村で生まれてほどなくして、家族に連れられ満州に渡ったと言います。小学校の写真(91年撮影)を目にした岡規美さんは、「これ小学校の写真ですね。私たちの(通っていた)小学校。立派な学校」。

岡さんの父親が南満州鉄道という鉄道会社、通称「満鉄」に勤務したこともあり、住んでいた撫順という市は炭鉱が栄え、岡さんたちは豊かな暮らしができていたといいます。しかし、日本は敗戦に傾き、満州にいた日本人の運命は一変します。

「大きな声がするから、ガラス窓の氷が厚く凍っているのをガシガシ削って穴を開けて、なんだろうと覗いたら、マネキンのように何も身にまとっていない人間(の遺体)が山のように積まれて、それがみんなカチカチに凍って積まれていた」

その遺体は、炭鉱があり豊かな撫順を目指し移動してきたものの食糧が絶え、寒さから息絶えた日本人たちでした。終戦から1年経った1946年11月、岡さんが14歳の時。日本に引き揚げるため、両親とともに撫順から貨物列車に乗り、中国・葫芦島に向かいます。

「石炭焚いて走っているから、ばい煙が粉雪と一緒にすぐ吹き溜まり作るんですよね。無蓋貨車ですから。天井も何もない。幸いに私が乗ったのは、座れば頭が隠れるくらいの高さの貨車だったんです。父親が、何を思ったか、赤ちゃんを連れた女の人2人を連れてきて、毛布に座れと。2人とも、頭を下げて座られた。抱えていた赤ちゃんが、かたくなっている。抱いてきた時点でもう死んでいたのか。それとも今抱いているうちに死んだのか。そこは分からないけれど。亡くなったら、車外に捨てられるんですよ、みんな。捨てられるから、それを隠すためにずっと抱いておられたと思うんですよね。だから父が、『亡くなった赤ちゃんを抱いて日本に帰るのは無理だ』と。『悲しいだろうけど今度止まったらちゃんと穴を掘って入れてあげるからと言って、列車が止まったときに引き離したんですよ」

葫芦島の港で岡さんたちを待っていたのは、雲仙丸という3000トンを超す大型の引き揚げ船。しかし、港で食糧を受け取れず、力が尽き果てて死んでいく人たちが多くいたと言います。

「船が来たぞということでみんなぞろぞろ船着場まで歩いたけど、途中で子供が歩けなくなって、親が一生懸命引っ張るけれども子供がついてこないので、そこで立ち止まってしまう人。それから、一生懸命先行く人に手を伸ばしてね、なんとかしてくれと頼んでいても、それをみんな知らん顔して横を通って行くでしょ。私もここ(足)を引っ張られたんですよ。歩いているときに。そしたら父が、『振り向くな、振り向くな』って、『振り向いたらダメだ』って言うから、振り向かないで一生懸命歩いて行ったんですけど。振り向けば顔も見たでしょうし目も見たでしょうし」

引き揚げ者たちが船に隙間なく乗り込んだ過酷な航海の末、着いた先は、博多港。しかし、港に入る直前、船内でコレラが発生し、海上で30日間停泊して隔離されるなど、岡さんの引き揚げは最後まで苦難が続きました。

戦時中の凄惨な光景の記憶。岡さんは長年話すのをためらってきましたが、近年は、地元の中学校で子供たちに講演するなどしています。

「こういうことがあったことは、若い人はほとんど知らないと思う。いろいろ戦争の話はあってもね。引き揚げで亡くなった人たちがいたことを、今の若い幸せな人たちにも知っておいてほしい」

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