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新幹線開業の「影になる…」 特急は激減 普通列車の利便性は? 地元は不安訴え【佐賀県鹿島市】
2020/11/20 (金) 21:30
新幹線問題のシリーズ企画「新幹線~光と影の現場~」。2回目は、再来年の長崎ルート暫定開業により並行在来線の沿線となる鹿島市に焦点を当てます。特急列車の本数が激減する予定で、市民からは、不安の声が聞かれました。
佐賀県鹿島市にあるJR肥前鹿島駅。1日1200人ほどがここで乗車し、長崎本線の佐賀駅より西側で、県内で特急が停車するのはこの肥前鹿島駅と肥前山口駅のみです。
2022年秋に予定されている九州新幹線・長崎ルートの暫定開業。武雄温泉駅から長崎駅を結ぶ新幹線が開業することで肥前鹿島駅を含む長崎本線の肥前山口-諫早間は並行在来線となります。再来年の新幹線の暫定開業から、肥前鹿島駅の特急の本数は、現在の上下50本程度から、14本程度に減る見込みとなっています。2016年、佐賀県・長崎県・国・JRなどの6者合意により博多-肥前鹿島間の特急本数を開業後3年間は14本程度、その後20年間は10本程度で運行することが確認されました。
駅の利用客の声は。(鳥栖方面への利用客)「減るっていうのは、お聞きしたことあったんですけど、本数を聞いて、動揺が。どうしようかなと思っていますね、正直なところ」(佐賀方面への利用客・男子高校生)「普通列車を逃したときの絶望感が増すと思います。今年卒業で良かったです」(博多方面への利用客)「すごく困ります。特急でしか行けない時間帯とかもあるので、なくなると困るかな」
鹿島市の経済界にも話を聞きました。(鹿島商工会議所・森孝一会頭)「10本となると片道5本ですから、これが何時頃運行するのか、どこでダイヤが決まるのか分からないから、そうなるとやっぱり通勤とか通学とか、それから出張者、これは非常に地元企業困っている。お客さんもたくさん来ますから、そのへんがはっきりせんのが一番困っているところで」
さらに、普通列車には別の問題が。肥前鹿島駅から西が非電化区間になり、ディーゼル車両になることで、速度が遅くなるため、佐賀・博多方面への直通が難しいという見解をJR九州が県に示しています。普通列車は肥前山口駅での乗り換えが必須になることが懸念されています。(肥前鹿島~佐賀駅利用客)「肥前山口駅って階段が一個しかないんです。高校生とかすごい量だし、お年寄りもそれで使うんだから。じゃ乗ったことあるの?って思いますね。あの人波に乗って、肥前山口駅で乗り換えてみろって思います」
6者合意では、普通列車については、暫定開業後も「サービスレベル」の「現行水準を維持」すると記されていました。これについてJR九州の幹部が、今月の県議会で見解を示しました。(JR九州・古宮洋二専務)「六者合意のサービスレベルとは、普通列車は運転本数しか記載されていないことから、当社としては運行本数を合意したものと理解している。佐賀方面の直通運行についてサービスレベル維持の約束を守っていないというご指摘には当たらないと考える」
利用者の利便性とは、本数の問題だけなのか?合意文書の解釈も食い違う中、大きく影響を受けるのは、通学に使う高校生たちです。(太良町から通う高校生)「むしろ(今より)増やしてほしい。少なすぎる。部活で、(午後)1時電を逃したら次5時電みたいな感じなので、結構きついです」肥前鹿島駅から太良町に行く普通列車は、午後1時台の次は午後5時台までありません。現在でも、利便性が良いとは言えない状況です。
(鹿島商工会議所・森孝一会頭)「在来線が減便されるのが、我々にとっては進出企業とか呼ぶ場合には非常にハンデになるし、レベルダウンになる。鹿島は自分たちが犠牲になって新幹線が出来るということだから、その代償としてやっぱり、存続する在来線の利便性をとにかくやってもらいたい」
現在、大きな問題になっている新鳥栖-武雄温泉間の整備方式。森会頭は、「全線フル規格に反対するわけではない」としつつ、その影響を懸念します。(鹿島商工会議所・森孝一会頭)「フル規格という話もありますね。そうなったときは費用がどうなんだろうかと、これが一番心配ですね。やはり佐賀県の予算を使うわけですから。そっちの方にも費用を使われてしまうとなると、ちょっと本当に大変なことになる」
肥前鹿島駅前では、夕方、送迎の車が列をなして道路に並ぶ光景が。鹿島商工会議所は、駅の導線に課題がある肥前鹿島駅の再整備のほか、有明海沿岸道路の早期整備や長崎自動車道から鹿島への高規格道路の整備を、国や県に訴え続けています。こういったところに予算が回ってこなくなるのではないかと懸念します。
(鹿島商工会議所・森孝一会頭)「新幹線の西九州(長崎)ルートというのは、やっぱり西九州、佐賀県南西部の一体化で盛り上げていこうということで言われたわけで、光と影は作らないということだったが、今の状況だとどうしても、どう見てもこっちが影になってきているということですから」
ガタリンピック、酒蔵ツーリズム、祐徳稲荷神社など、地元の努力によって観光面で注目を高めてきた鹿島市。そこに影を落とさないためにすべての関係者の知恵と協力が求められます。
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