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謎を解く鍵は「大きな石を長距離運ぶ力」と「交流範囲」吉野ヶ里遺跡 専門家の見解【佐賀県】

2023/07/18 (火) 18:40

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吉野ヶ里遺跡から見つかった石棺墓。人骨や副葬品は見つかりませんでしたが、県は「邪馬台国時代の有力者の墓」と結論付けています。大きな石を長距離運ぶ力と、集落の交流範囲が埋葬された権力者の謎を解く鍵となりそうです。

【佐賀大学教育学部(火山岩石学)角縁進教授】
「たかが石ですけど、されど石ということで、これは石棺に限らず、いろいろな遺跡にも使われている石に注目していくと面白いことがわかってくる」

吉野ヶ里遺跡で見つかった石棺墓。人骨や副葬品は発見されませんでしたが、赤い色の顔料や石のふたの「線刻」などから、県は「邪馬台国時代の有力者の墓」と結論付けています。
見つかった石棺墓で特に注目されているのがこの大きな石のふたです。県は石のふたのうち3枚はもともと1枚の石、さらに多良岳でとれたカンラン石玄武岩であると発表しました。

【佐賀大学教育学部(火山岩石学)角縁進教授】
「大きな石ぶただとビックリした」

県の依頼を受け、石のふたの鑑定に携わった佐賀大学・教育学部の角縁進教授。
火山岩石学を研究する県内唯一の人物で、石を鑑定することで当時の歴史や文化が分かるといいます。

【佐賀大学教育学部(火山岩石学)角縁進教授】
「石の見た目から考えて、多良岳の東海岸あたり、太良町から(長崎県)小長井町にかけて、そのあたりが産地になるんじゃないかな」

角縁教授は肉眼でカンラン石玄武岩と鑑定、県内では多良岳ほかに唐津や玄海方面からも産出するといわれていますが、大きさやその特徴から”産地は多良岳でその石がとれたのは海岸沿い″としています。
しかし、多良岳から吉野ヶ里遺跡までは直線距離にして約40キロ、さらに、石のふた3枚をあわせた総重量は約400キロ、そんな石を運ぶことができたのでしょうか?

【佐賀大学教育学部(火山岩石学)角縁進教授】
「2つのパーツに分けて運んだという風に考えた方がいい。有明海があるので、吉野ヶ里まで運ぶとなっても簡単に舟やイカダで運べる。山の中を苦労して運ぶことなしに、海岸沿いに出ている石でそのまま舟に載せるという作業」

2つのパーツに分かれていればそれぞれの石は大人5人程度で抱えられるほか、当時、吉野ヶ里遺跡は海岸から数キロの場所に位置していたという説もあり、多良岳から有明海を介して運ぶほどの力を持っていたと考えられます。
さらに石からは埋葬された権力者の交流範囲が分かるといいます。

【佐賀大学教育学部(火山岩石学)角縁進教授】
「どこの石を使っているのかというのが結構重要。それはその当時の、吉野ヶ里なら吉野ヶ里の交流範囲がどこまであったのかを示すことになる」

県によりますと、遺跡の調査ではこれまで石に注目することがほとんどなく、今回の吉野ヶ里遺跡の例は今後の考古学のあり方を見直すきっかけにもなりそうです。

【佐賀大学教育学部(火山岩石学)角縁進教授】
「石棺を作る壁の石も今から公表されていくと思う。石に注目して、今回出た石棺墓はいろいろ面白いことがわかってくるんじゃないかな」

一方で、石棺墓にカンラン石玄武岩を使うことは珍しく、なぜ多良岳の石を選んだかの謎は遺されたまま。
県は今後もこの石棺墓について調査・研究を進め、9月下旬からは残る40%の未調査エリアの発掘調査を再開する予定です。
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