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新しい風で「肥前吉田焼」の伝統守る 100年後も存続する産地へ【佐賀県】

2024/12/03 (火) 18:20

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高齢化や人手不足に頭を抱える県内のやきものの産地。存続の危機とも言われるなか嬉野市の肥前吉田焼では新しい風を吹き込むことで伝統を守ろうとさまざまな取り組みが始まっています。

【224porcelain 辻諭代表】
「若い人たちの仕事の選択肢の1つとして、焼き物を提案できたらいいなと思っている」

嬉野市吉田地区で約400年にわたり受け継がれてきた“肥前吉田焼”。
有田焼や波佐見焼など近隣のやきものの里と比べると小さな産地ですが、湯呑みや急須など生活雑器を中心に作り古くから人々の暮らしに寄り添ってきました。
そんな肥前吉田焼がいまピンチを迎えています。

【副千製陶所 副島謙一社長】
「この産業は分業制でできているので、ほとんどのメーカーが生地屋さんに外注をして生地を作ってもらってそれを加工して販売しているかたちだが、その生地屋さんが軒並み減っている」

やきものは基本的に加工するための生地をつくる業者や製品にする窯元などに分かれ協力してきた分業制の産業です。
しかし、近年は生地をつくる人が減りメーカーどうしで生地の奪い合いになっているほか、窯元の職人の年齢もあがり平均年齢は60歳超え。
この産業に携わる人々の高齢化が深刻になっているのです。

【副千製陶所 副島謙一社長】
「年齢を重ねることで、病気になったり事故が起こったりして働けなくなった瞬間に、その作業をできる人がいなくなってしまう。このままだと簡単に言えばもう産地がなくなってしまう」

どうにかこの状況を打開しようと肥前吉田焼の産地は“若者を含む関係人口の増加”へ向けて新たな取り組みを始めました。

その一つが「アーティストインレジデンス」
海外のアーティストが吉田地区に短期滞在しながら作品をつくる取り組みです。

【224porcelain 辻諭代表】
「やはりすごく感性も違うので、そういった人と触れ合うことによって、良い刺激を受けたり、学びもあったりということで、吉田焼にとってもすごく有意義な取り組みになるのではないかなと思っている」

県や市などと協力して受け入れをしているのは2012年に224porcelainを立ち上げた窯元の辻諭さん44歳。
11月はフィンランドからアーティストのトゥーリ・サーレライネンさんが来日し辻さんの工房で約1か月間作品づくりに励んでいました。

【トゥーリ・サーレライネンさん】
「ここはとても静かで平和だと思います。田舎のような感じが気に入っています」

トゥーリさんはフィンランド出身の37歳。
世界的なメーカー“IKEA”で商品化の経験もあります。
今回の滞在で手掛けたのはテトラポットの形をした花瓶。
日本の川沿いや海岸で見た消波ブロックがフィンランドとは違う面白いかたちだったことがヒントになったといいます。

【トゥーリ・サーレライネンさん】
「嬉野の川沿いを散歩していたら大きな川に合流する小さな川がありその中にテトラポットを見つけました。なぜそんなところにあるの?って」

滞在中は辻さんの工房に隣接するゲストハウスで生活しているトゥーリさん。
スーパーで食材を買い日本料理に挑戦したりパソコンでデザインを考えたりして過ごしています。
一方、先進的な取り組みであるがゆえにこんな場面も…。

【陽子さん】
「Do you usually spinning?」
【トゥーリさん】
「yeah」
【陽子さん】
「自分が乾かすときは回しながら乾かすんだって」
【辻さん】
「本当?」
【トゥーリさん】
「yeah! different?」
【辻さん】
「different(笑)」

トゥーリさんとの会話は英語。
言葉の壁はありますが辻さんの妻・陽子さんの通訳で作品づくりの手順や技術などを教え合うことができ、互いに良い刺激になっているということです。

【トゥーリ・サーレライネンさん】
「この取り組みは本当にすばらしいです。新しい文化や新しい場所、プロの人達に出会うことができます。ここでの生き方や働き方、そして陶芸や職人技について知り、より理解が深まりました」

一方、関係人口の増加を目指すなかで、今年は若者にフォーカスしたプロジェクトも進んでいます。

「3つの窯元で絵を描くと、代表で副千さんのところでいくと後ろのドットをいれることで背中にぶち模様のはいったナマズのコップになると」

学生と窯元のコラボ商品の開発です。

【224porcelain 辻諭代表】
「業界で凝り固まった僕らのこの硬い頭をすごく柔らかくいまの感性で何か面白い提案をしてくれるんじゃないかと」

この日は中間発表が行われ、学生たちが商品案をプレゼンしました。

【窯元がアドバイス】
「作り方次第では家庭で楽しめるようなものにしたり…」

さまざまな視点で嬉野の特産品や窯元の特徴や強みを生かした個性豊かなアイデアを出す学生たち。
集まった窯元の代表は実際に商品化することを念頭にどのような工夫が必要かアドバイスをしていました。

【学生】
「磁器などを見る機会はあってもどう作っているかは全然知らないし、関わってみたくても関われないのが現状だったので、こういう機会をもらえてすごくうれしい」
「元々焼き物すごく好きで、形や体験そのものから提案できるというのが、めちゃくちゃ自分の中ではありがたいというかうれしい体験だったので、作り手側からの好きというのが芽生えた」

学生達は12月最終プレゼンを行い、選ばれた作品が来年商品化される予定です。
高齢化だけでなくコストの高騰や脱炭素化などまだまだ産地は多くの問題を抱えています。
辻さんは窯元の一人として吉田地区の良さや肥前吉田焼の魅力をさまざまなアプローチで発信し続けることが存続への鍵だと話します。

【224porcelain 辻諭代表】
「吉田地区は若い方がのびのび作陶したり、アーティスト活動もできるような場所でもあるので。次の100年に向けて吉田焼をどうしていくかということを考えながら、若い職人や作家が活躍するような産地を目指して取り組んでいけたらいいなと思っている」
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