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小さな島のリストランテ ~シェフ27歳のおもてなし~(再放送)

佐賀県唐津市沖の玄界灘に浮かぶ、周囲わずか3.6kmほどの小さな島「松島」。この島に小さなイタリアンレストランがある。オーナーシェフの宗勇人(27歳)さんは「島が好きだから、少しでも島のためになれば」とレストランを開店させたと言う。20世帯、人口55人が暮らす松島の基幹産業は漁業。島の周囲の魚介類を素潜りで獲る「海士漁」に従事する人が多い。島には信号もなければ、コンビニもなく、1台の自動販売機があるだけ。しかし勇人さんは「不便と感じたことはない。何もないのが当たり前だから」と笑う。

松島で生まれた勇人さんは、高校進学時に「料理人になったら、父が獲った魚や島の食材を使って仕事ができる」と思い、調理科のある佐賀県立牛津高校に進む。その後、佐賀市と福岡市で修業し、料理人としての腕を磨いてきた。2015年3月に開かれた島のイベント「1日限定レストラン」に招かれ、振る舞った料理が好評だったことから、島での起業を決意。1年後にイタリア料理店「リストランテマツシマ」を開店させた。

松島へは呼子港から15分。1日3往復しかない定期船で渡るしかない。「こんな小さな何もない島に、まずお客さんが来るわけがない」と父の勇さんは当初、レストランの開店に反対。しかし開店から半年で、延べ500人程の客が訪れ、今は「思い切りやってもらいたい」とエールを送る。春から夏にかけて順調に営業を続けてきた勇人さんのレストランは、冬場になると客足が落ちる。冬の玄界灘は時化の日が多く、島に渡れない日が多いからだ。都会のレストランでは掻きいれ時のクリスマスイブにも1組の予約が入っただけ。落ち込む勇人さんに父・勇さんは「また春になれば、お客さんは来てくれる」と励まし続けた。

客が減りレストランの営業が少なくなった冬、勇人さんは「ずっと父の漁に憧れていた」からと海士の修業を始めた。父から直接手ほどきを受け、今ではサザエやアワビなどの食材を自ら調達する。勇人さんは「自分で海の中の状態を知りたい」と始めた海士漁のほか、「イノシシ対策にも役立ちたい」と現在、野菜畑の開墾にも取り組んでいる。

「魚がいっぱい獲れたから、食べる?」と気さくに声をかけ、魚をくれる島の人たちとの間合いが「大好き」という勇人さん。「少しでも島のためになれば」と、今日も厨房に立ち、自分流の「おもてなし」を続けている。

(2017年3月に放送した番組の再放送です)

【サガテレビ制作】

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