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国内外シェフ魅了する天才技「神経締め」 魚店3代目「唐津の魚」への愛【佐賀県】
2021/12/20 (月) 19:50
誇りやこだわりをもち活躍する人などをクローズアップする佐賀人十色。今回は唐津市から国内だけでなく海外の一流シェフまでも魅了する「神経締め」の天才とは?
「神経締め」、それは魚の中枢神経を破壊し死後硬直を遅らせることで、通常より長く鮮度を保つ処理方法です。【大山鮮魚3代目・大山拓朗さん】「唐津の魚の香り、唐津の海の香りを残すのが大前提。いらんことしないで自然のまま良い手当をして出してあげる、しっかり香りを残してあげるというのが…うわ、すごく良いこと言ったよ今(笑)」得意げに話すこの男性こそ「神経締め」の天才を呼ばれる大山鮮魚3代目、大山拓朗さん37歳。唐津市にある鮮魚店の3代目として生まれ、次元を超えた「神経締め」で唐津の魚のおいしさを最大限に引き出す天才です。
午前2時半すぎ。天才の朝は早い。競りが始まる1時間ほど前から動き出します。【大山鮮魚3代目・大山拓朗さん】「かわいくないですかこれ?サメ」「ずっとしけだったので心配していたが、週明け一発目にこれだけあると、すごくワクワクする」水槽に手を入れ、サイズ感や自分の勘を頼りに良い魚を見極めます。【大山拓朗さん】「鮮魚だとサワラ、タイは良いのから全部買おうかなと」【大山さんと漁師やりとり】「最近、儲かっとるっちゃろ?」「それ買うけん」漁師がいるからこそ自分の仕事が成り立つと話す大山さん、今後の唐津を担う若い漁師には特に期待をしているといいます。【佐賀玄海漁協・最年少の漁師】「良い魚をとったら大山さんが買うイメージがある」「自分たちは神経締めとか勉強不足なので、これからいろいろ教えてもらおうかなと」
午前4時半すぎ。【大山鮮魚3代目・大山拓朗さん】「これが髄液。(脊髄に針金を通し)髄液を破壊し取り除く作業。髄液から腐敗の指令が出るので、そこをきれいに取り除いて、腐敗の進行を止める」この技をどこで習得したのか尋ねてみると…?【大山鮮魚3代目・大山拓朗さん】「小さいときから身近にあったので、見学という意味ではすごく長い」「なんとなくやっていたらこういうことだなと、難しかったけど、なんかやれちゃったみたいな」神経締めの他にも脳を先に破壊することで魚がエネルギーを無駄に消費しないよう保ったり、血を適切に抜くことで微生物や雑菌の繁殖を抑え生臭さを防いだりとさまざまな処理が必要で、どれか一つでも欠けてしまうと魚の最大限の良さは引き出せません。
さらに、梱包にもこだわりが。いかに魚へ負担をかけないかを考え、人一倍時間をかけているといいます。【大山鮮魚3代目・大山拓朗さん】「開けた瞬間に、宝箱のように思ってもらえたら。良い料理を作ってやろう、という気になってくれると思うので、そこはしっかり意識してやっている」
午前7時を過ぎたころから地元の料理店の店主らが魚を求めてやってきます。【日本料理あるところ店主】「抜群に良い。ここじゃないと買えない」【イタリアンワイズキッチンシェフ】「素材の持ち味を生かしてくれて、処理してくれるので助かっている」唐津市にある和食・いけす料理店、【和食・いけす料理玄洋・善田浩介店長】「包丁の入り具合も全然違うし、身の返り具合も、刺身切っているときも全然弾力が違う」「魚に対しても客に対しても、かける情熱が全く違うので、そこを信頼して僕らも毎日通っている」
取引先は県内はもちろん首都圏を中心におよそ60店舗、さらに、海外ではシンガポールや香港、マカオでも注文が殺到しているといいます。今年7月には県の事業使い台湾への輸出を開始、新たな販路を拡大し、月間取引額は台湾だけで150万円を超えるほど。唐津から台湾までは2日ほどかかりますが、大山さんの「神経締め」により鮮度は保たれたまま客のもとへ届けられます。
12月13日、なにやら落ち着かない様子の大山さん。その見つめる先には…なんと福岡に駐在する台湾の総領事にあたる台北駐福岡経済文化弁事処の処長、陳銘俊)さん御一行の姿が。【大山鮮魚3代目・大山拓朗さん】「はじめまして。お会いできて光栄です大山拓朗です。よろしくお願いします」この日のために練習した渾身の自己紹介も披露、【大山鮮魚3代目・大山拓朗さん】「2日かけても3日かけても魚って生で食べられる状態をつくるのが僕の仕事」【台北駐福岡経済文化弁事処・陳銘俊処長】「生き生きして、台湾まであるいは遠くまで届けるにはどういう風にして?」説明するより見てもらいましょうということで…神経締めを見学。また御一行には2日前に大山さんが締めたタイと、そうでないタイを食べ比べてもらいました。【台北駐福岡経済文化弁事処・陳銘俊処長】「全然違う」「こんなおいしい魚をもっとたくさんの台湾人に食べてもらいたい」訪問は無事に終了。普段はほとんど緊張しないという大山さんが珍しく緊張した30分間でした。
【大山鮮魚3代目・大山拓朗さん】「全然ゴールじゃない。ゴールを決めたら本当にそれこそ終わるので、まだまだ発展途上かな、納得は全然していない」「ずっと唐津の魚が当たり前においしいというのが続くように、それを伝えていく責任があると思うので率先してどんどんやっていきたい」
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