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「在宅血液透析」の現状 患者にはメリットも普及率低く【佐賀県伊万里市】
2025/02/13 (木) 18:19
![サムネイル](http://img.youtube.com/vi/EIEbQCqUjhU/mqdefault.jpg)
さがリサーチ。今回は人工透析を自宅用の機材で行う「在宅血液透析」について。仕事と両立できるなど多くのメリットがある一方、県内で導入しているのは伊万里市の病院のみといわれ、広く普及していないのが現状です。どういったものなのか利用している患者を取材しました。
【リポート・波佐間崇晃】
「こちらの伊万里市にある前田病院は県内有数の人工透析を行う医療機関です。およそ300人もの末期腎不全を患った方々が治療を受けています」
1916年開業、伊万里市の前田病院。
隣接する腎センターでは日夜、腎不全の治療が行われています。
医療技術者の「臨床工学技士」が人工透析の装置などの操作や管理を行います。
【前田病院臨床工学技士 古賀幸雄さん】
「人工透析は終生続けないといけない治療。腎臓移植のみが根治的な治療になります」
日本透析医学会の調査(2022年末時点)では、国内の透析患者の総数は34万人以上にのぼるということです。
末期腎不全患者の約9割が選択する治療方法が「血液透析」です。
【古賀さん】
「ダイアライザー(血液を浄化する装置)を介して余分な水分を抜いたり、毒素を体から取り除く」
血液透析は、腕の血管に針を刺し、人工的に血液を循環させる治療方法です。腎臓の機能低下によって血液のろ過ができなくなった人から、尿毒素などの老廃物や余分な水分を排出します。
透析中は6時間ほどベッドから動くことができません。その負担を減らすため取り組んでいるのが、自宅で行う透析「在宅血液透析」です。
【古賀さん】
「在宅血液透析学会(正しくは日本在宅血液透析学会)で公表されている佐賀県内の施設は前田病院のみです。こちらが在宅血液透析で実際に患者さんが使っている装置のセットです」
患者の自宅でもできる在宅血液透析を2018年春に導入。前田病院によりますと、県内で導入している医療機関は他にはなく、現在4人が利用しているということです。
循環をコントロールするメイン装置は病院とほぼ同じものを、水道水に含まれる不純物を除去する装置などは自宅用のものを病院が貸し出しています。
【古賀さん】
「患者さんの生活に合わせた血液透析(スケジュール)を組めることが一番のメリットだと思います」
自宅で稼働する分、電気代と水道代はかかりますが、機材の貸し出し費用はありません。
末期腎不全の平谷隆幸さん(57)
6年ほど前から在宅血液透析を行っています。この日は自宅で使う透析用の針を受け取りに訪れました。
有田町在住の平谷さんは母親の勢津子さん(86)との2人暮らしです。
【隆幸さん】
「腎臓の代わりにこの機械を使って血液の浄化を今からする。この機械の準備を20分から30分くらいかけてする。準備ができたら針刺し」
針を刺すのは原則として患者本人。介助者が行うには資格が必要になります。
【隆幸さん】
「これは母にやってもらいます」
勢津子さんが慣れた手つきで針とチューブをつなぎます。在宅血液透析では同居者などによるサポートが必要です。
【隆幸さん】
「これで始まりですね」
この治療方法を始めるには、事前の研修を受けなければなりません。
【隆幸さん】
「針刺しの方法とか消毒の仕方とか、回路(血液が循環する部分)の組み方とか。私の場合は半年ほどかかりました」
研修期間は3カ月から半年ほど。病院で臨床工学技士が行う作業を患者自身でできるようになる必要があります。
【隆幸さん】
「仕事で疲れて帰ってきてね。シャワーなりお風呂なり入ってから透析するんですけども、ゆっくりしています、本当に」
週5日、伊万里市内の別の病院に看護師として勤務している平谷さん。
仕事が終わるのは夕方以降で、勤務後に前田病院で透析を始めると帰宅するのは深夜になります。
【隆幸さん】
「移動の時間も省けますし、それは本当ありがたいです。仕事終わってまたそれからさらに6時間と考えると気が滅入りますよ。全然違うですよ」
平谷さんを異変が襲ったのは43歳のころ。病院で検査した結果、腎硬化症と診断されました。
【隆幸さん】
「体がだるくて、日課にしていたジョギングなどが途中できつくなって、体がむくんだりしたので、体がおかしいかなと。健康には自信があったんで、『まさか自分が』という思いはありました」
と、その時…。装置から警告音が鳴り始めました。急ぎ病院に連絡する平谷さん。電話の先にいる古賀さんが指示を出します。
「分かりました?」
「分かりました」
すぐに部分的な接続不良があったことが分かり、大事には至りませんでした。
【隆幸さん】
「前田病院のスタッフは連絡してすぐに反応してくれるのでありがたい。万全の体制を敷かれていると思う」
前田病院の在宅血液透析チームは5人。トラブルに備え、ほぼ24時間体制での電話対応や、自宅訪問の準備をしています。
機材の導入で平谷さんの家では電気代と水道代がそれまでの倍近くになりました。それでも親子2人にとっては得るものが大きいといいます。
【母 勢津子さん】
「仕事後に前田病院で透析すると夜中に帰ってくるまで休まれんし、帰ってくるまで気が気ではないです。今はもう午後9時半になったら『もう寝るよ』と安心して寝ています。ゆっくりしています」
【隆幸さん】
「母1人、子1人の状態なんで、母も高齢になりましたので、側にいるというのもありがたいですし、逆に私が側にいるというのも、母にとっては心の支えになっているのかなと思っています」
在宅血液透析普及のネックとなっているのが、事前研修など指導の準備やトラブル時のサポート体制といった病院側の負担です。相応のマンパワーが求められることなどから、全国での普及率は1%未満といわれていますが…。
【古賀さん】
「お仕事との両立だったり、ご家族との時間の両立などを求める患者さんに対しては、在宅(血液)透析を多く勧めていきたい」
【リポート・波佐間崇晃】
「こちらの伊万里市にある前田病院は県内有数の人工透析を行う医療機関です。およそ300人もの末期腎不全を患った方々が治療を受けています」
1916年開業、伊万里市の前田病院。
隣接する腎センターでは日夜、腎不全の治療が行われています。
医療技術者の「臨床工学技士」が人工透析の装置などの操作や管理を行います。
【前田病院臨床工学技士 古賀幸雄さん】
「人工透析は終生続けないといけない治療。腎臓移植のみが根治的な治療になります」
日本透析医学会の調査(2022年末時点)では、国内の透析患者の総数は34万人以上にのぼるということです。
末期腎不全患者の約9割が選択する治療方法が「血液透析」です。
【古賀さん】
「ダイアライザー(血液を浄化する装置)を介して余分な水分を抜いたり、毒素を体から取り除く」
血液透析は、腕の血管に針を刺し、人工的に血液を循環させる治療方法です。腎臓の機能低下によって血液のろ過ができなくなった人から、尿毒素などの老廃物や余分な水分を排出します。
透析中は6時間ほどベッドから動くことができません。その負担を減らすため取り組んでいるのが、自宅で行う透析「在宅血液透析」です。
【古賀さん】
「在宅血液透析学会(正しくは日本在宅血液透析学会)で公表されている佐賀県内の施設は前田病院のみです。こちらが在宅血液透析で実際に患者さんが使っている装置のセットです」
患者の自宅でもできる在宅血液透析を2018年春に導入。前田病院によりますと、県内で導入している医療機関は他にはなく、現在4人が利用しているということです。
循環をコントロールするメイン装置は病院とほぼ同じものを、水道水に含まれる不純物を除去する装置などは自宅用のものを病院が貸し出しています。
【古賀さん】
「患者さんの生活に合わせた血液透析(スケジュール)を組めることが一番のメリットだと思います」
自宅で稼働する分、電気代と水道代はかかりますが、機材の貸し出し費用はありません。
末期腎不全の平谷隆幸さん(57)
6年ほど前から在宅血液透析を行っています。この日は自宅で使う透析用の針を受け取りに訪れました。
有田町在住の平谷さんは母親の勢津子さん(86)との2人暮らしです。
【隆幸さん】
「腎臓の代わりにこの機械を使って血液の浄化を今からする。この機械の準備を20分から30分くらいかけてする。準備ができたら針刺し」
針を刺すのは原則として患者本人。介助者が行うには資格が必要になります。
【隆幸さん】
「これは母にやってもらいます」
勢津子さんが慣れた手つきで針とチューブをつなぎます。在宅血液透析では同居者などによるサポートが必要です。
【隆幸さん】
「これで始まりですね」
この治療方法を始めるには、事前の研修を受けなければなりません。
【隆幸さん】
「針刺しの方法とか消毒の仕方とか、回路(血液が循環する部分)の組み方とか。私の場合は半年ほどかかりました」
研修期間は3カ月から半年ほど。病院で臨床工学技士が行う作業を患者自身でできるようになる必要があります。
【隆幸さん】
「仕事で疲れて帰ってきてね。シャワーなりお風呂なり入ってから透析するんですけども、ゆっくりしています、本当に」
週5日、伊万里市内の別の病院に看護師として勤務している平谷さん。
仕事が終わるのは夕方以降で、勤務後に前田病院で透析を始めると帰宅するのは深夜になります。
【隆幸さん】
「移動の時間も省けますし、それは本当ありがたいです。仕事終わってまたそれからさらに6時間と考えると気が滅入りますよ。全然違うですよ」
平谷さんを異変が襲ったのは43歳のころ。病院で検査した結果、腎硬化症と診断されました。
【隆幸さん】
「体がだるくて、日課にしていたジョギングなどが途中できつくなって、体がむくんだりしたので、体がおかしいかなと。健康には自信があったんで、『まさか自分が』という思いはありました」
と、その時…。装置から警告音が鳴り始めました。急ぎ病院に連絡する平谷さん。電話の先にいる古賀さんが指示を出します。
「分かりました?」
「分かりました」
すぐに部分的な接続不良があったことが分かり、大事には至りませんでした。
【隆幸さん】
「前田病院のスタッフは連絡してすぐに反応してくれるのでありがたい。万全の体制を敷かれていると思う」
前田病院の在宅血液透析チームは5人。トラブルに備え、ほぼ24時間体制での電話対応や、自宅訪問の準備をしています。
機材の導入で平谷さんの家では電気代と水道代がそれまでの倍近くになりました。それでも親子2人にとっては得るものが大きいといいます。
【母 勢津子さん】
「仕事後に前田病院で透析すると夜中に帰ってくるまで休まれんし、帰ってくるまで気が気ではないです。今はもう午後9時半になったら『もう寝るよ』と安心して寝ています。ゆっくりしています」
【隆幸さん】
「母1人、子1人の状態なんで、母も高齢になりましたので、側にいるというのもありがたいですし、逆に私が側にいるというのも、母にとっては心の支えになっているのかなと思っています」
在宅血液透析普及のネックとなっているのが、事前研修など指導の準備やトラブル時のサポート体制といった病院側の負担です。相応のマンパワーが求められることなどから、全国での普及率は1%未満といわれていますが…。
【古賀さん】
「お仕事との両立だったり、ご家族との時間の両立などを求める患者さんに対しては、在宅(血液)透析を多く勧めていきたい」
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